ドナルド・トランプと核兵器-トランプ流ハッタリ交渉術

プーチン氏

        ウラジミール・プーチン大統領

核兵器について、
まずは概要を整理します。

冷戦時代の
米ソ核兵器開発競争において、

「核抑止」の要とされたのは、

互いの敵国本土の都市や
核ミサイル基地などの

標的を破壊する「戦略核兵器」です。

戦略核兵器には、以下の種類があります。

  1. 大陸間弾頭ミサイル(ICBM=射程5500km以上の地上発射弾道ミサイル)
  2. 潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)
  3. 重爆撃機

これらの三種類の
遠距離核打撃システムを

「核の三本柱=トライアド」と呼びます。

ICBMミサイル基地は、
固定式と移動式がありますが、

移動式であっても、
偵察衛星や偵察機の性能向上により、

敵国に簡単に位置を
特定される状況となりました。

したがって、核戦争時においても、
敵国から先制攻撃を受けた場合には

ICBMミサイル基地は
比較的容易に

壊滅的打撃を受けることになり、
反撃能力を失います。

そこでいかなる場合にも
反撃能力を担保するために

重要なのが、SLBMを搭載して
深海にひそむ

ミサイル原子力潜水艦(SSBN)です。

冷戦時代のソ連は、
ここに力を入れることにより、

アメリカとの間で
「MAD(相互確証破壊)」という

状況をつくりだすことに
成功したといわれています。

MADについては、後述します。

ロシアは、ソ連時代の戦略核兵器を
ほぼ引き継いでいて、

SLBMを重視する姿勢も不変です。
そのロシアにとって最も重要な海域が、

オホーツク海になります。

2016年12月15日に山口で、
12月16日に東京で、

日露平和条約と北方領土をめぐる
安倍首相とプーチン大統領の会談が
行われました。

日本では楽観論も飛び交いましたが、

ロシアにとって北方領土
(ロシア名:クリル諸島)は

オホーツク海に
ミサイル原子力潜水艦(SSBN)を

ひそませる聖域の一翼をになっており、

その軍事戦略上の重要性を考えると、

日本からどんなにカネを貢がれても、
北方領土の返還など
考えにくいのです。

百歩ゆずって、
色丹島、歯舞諸島の2島返還なら、

「聖域」の外側なので
交渉に応じる余地はあるでしょう。

でも、択捉島、国後島については
絶対に譲れないはずです。

結果は、プーチン大統領の
「ゼロ回答」でした。

政府は「共同経済活動」の合意について
成果を強調しますが、

とてもあいまいで、
とりあえず言っちゃえ的なノリでしょう。

ロシア核戦略の聖域、
オホーツク海についての

良記事を紹介します。

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中国の南シナ海への積極的な進出も、
同様の文脈で説明できるという
意見があります。

中国も、アメリカとの間での
MAD(相互確証破壊)を
目指しているそうです。

もしそうなれば、
安倍首相が「アメリカの核の傘」を理由に

国連の核軍縮決議に
反対したりしていますが、

「核の傘」の効力は
無効化されることになります。

アメリカ、ロシア、中国の核兵器事情に
ついてよくまとまっているので、

次の記事をお読みください。

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さて、核抑止論には
様々な考え方があります。

現代において中心にある
MAD(相互確証破壊)も含めて

理解を深めましょう。

私は京都大学文学部時代、
当時法学部の教授であった

故高坂正堯(こうさか・まさたか)氏の
講義にモグリで参加し、

最新のパワー・ポリティクス
(力による国際政治を現実的に読み解く)
を直接学びました。

その中で、核抑止論は
当然ながら中心的な話題のひとつでした。

高坂正堯氏については、
次の記事をお読みください。

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核抑止論についてまとめていきますが、
前提条件として、

高坂氏も含め、議論されるのは常に
アメリカ側が提唱・採用した戦略に
とどまるということです。

ソ連(ロシア)、中国が実際には
どのような核抑止論に基づき

行動してきたのか、しているのかは、
あまり情報がなく、

把握するにはかなり
専門的な研究が必要です。

まずは、アメリカが採用してきた
核抑止論を

Hatena Keyword「核戦略」からの
引用によって簡単に紹介します。

大量報復戦略

アメリカ最初の核戦略。「ニュー・ルック戦略」とも。アイゼンハワー政権下、ダレス?国務長官によって提唱された。

何が起きても大威力の核兵器で報復する、という体制を構築すれば戦争を抑止できるという戦略。そこから、大雑把に言うと、次のような好循環の生成を狙った。

大量の核兵器を配備→通常兵器を使わなくていい→軍事予算を節約できる→浮いたお金で国力を増大→大量の核兵器を配備(以下繰り返し)
が、冷静に考えると、何が起きても「核兵器で反撃する」か「何もしない」かの二者択一を行わなくてはならない、というのは現実的な方策ではない。

柔軟反応戦略

ソ連の核戦力が向上したことで、柔軟性に欠ける大量報復戦略は放棄され、その代わりにケネディ政権によって採用された。

「グリーンベレーから核兵器まで」、戦争のあらゆる局面に対応可能な軍事力を建設して、紛争の各段階において適切な戦力を展開する能力の保有を目指す。これによって戦争を抑止できると考えた。

以後、ニクソン政権の「ターゲティング・ドクトリン」、カーター政権の「相殺戦略」など、名前を変えながらアメリカの核戦略の基本となった。

相互確証破壊

MAD*2とも。核戦略というよりは、核戦略の状態を示す概念。「恐怖の均衡」「相互抑止」の中身。

「報復攻撃を行って相手国に致命的な打撃を与えるだけの戦力(=確証破壊)を、先制核攻撃を受けた後でも残せるのであれば、攻撃を抑止できる」

という考え(確証破壊戦略)を拡張し、米ソのいずれもがそのような核報復能力を保有することで、いずれも先制攻撃を行えない状態になった、とする。

実現のために核兵器搭載戦略爆撃機の空中待機、戦略原潜のパトロール配備、ICBMサイロの強化、移動可能ICBMの配備などが計画・実施された。

戦術核(通常戦力による戦闘とともに、
局地戦で使用される核兵器)の問題は
残るにせよ、

戦略核兵器は冷戦という、
イデオロギーも含めた

妥協のない大国同士の対立の
緊張の中で育まれてきたものです。

ということは、
米欧日陣営VS露中陣営という
ステレオタイプ、

既存マスコミや政府による
プロパガンダでは

「民主主義」vs「独裁、非人道」という
妥協のない対立関係が根本から変わり、

地域紛争が世界的な戦争を
連鎖的に引き起こす状態を脱し、

きわめて理性的に利害関係者同士が
話し合いによって、

時には力で地域紛争を解決する
仕組みが生まれたら、

戦略核の地位・意味は
相対的に下がることになります。

ドナルド・トランプ氏の
大統領就任によって、

世界は米欧日vs露中という構図が、

アメリカを中心とする南北アメリカ
中国を中心とするアジア
ロシアを中心とするユーラシア・中東
ドイツを中心とするEU

これらが並び立つ
多極的な世界に劇的に変わります。

紛争は、各地域の盟主の信用によって
平和裏に解決されます。

これは繰り返しになりますが、

軍産複合体をうまくだましてきた
オバマ大統領の外交、

ドナルド・トランプ氏に
大きな影響を与えている

ヘンリー・キッシンジャー氏の中国観、

ドナルド・トランプ氏と
ウラジミール・プーチン氏の
親しい間柄(親友といってもいいくらい)

ドナルド・トランプ氏が
EU統合をずっと邪魔していた

イギリスのEU離脱を予見し、
歓迎していること、

ドナルド・トランプ氏のNATO解体論
(EU軍の創設につながる)

これらの事象を虚心坦懐にみれば、
明らかです。

ドナルド・トランプ氏は2016年12月22日、
twitterで核軍拡が必要と発言しました。

このすぐ前に、
ウラジミール・プーチン大統領も
戦略核の強化に言及していたため、

すわ一大事と、世界的なニュースになりました。

その中で、最も代表的な論調を紹介します。

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この記事の決定的な問題点は、
世界秩序に関して、

アメリカ単独覇権主義が今後も続き、
世界は米欧日vs露中という構図が

変わることがないと、
暗黙の前提を置いている点です。

ほとんどの人が気付かない間に、
世界は劇的に多極化するという前提で、

戦略核に関する
ドナルド・トランプ氏と

ウラジミール・プーチン大統領の発言を
ながめたら、どうなるでしょう?

田中宇さんのメルマガでは、このように解説しています。

先日、トランプとプーチンが、同じ日に「核兵器を強化する」と表明した。双方とも、相手方と何か相談した結果とは言ってないが、2人は仲良しなので、意図的に同じタイミングで核軍拡を表明した可能性が高い。従来は、米国とロシアが敵対しつつ相互に核軍縮していく計画で、好戦的な米政界が軍縮に反対して計画が頓挫するシナリオだったが、今後は、米国とロシアが仲良く核軍拡するという、従来と正反対のシナリオが見えてきた。腕白な男の子2人が「お互いもっと強くなろうぜ」と仲良く言い合っている。米露が仲良しなら核兵器も要らなくなるのに、仲良く核軍拡だという滑稽さ。これは、冷戦型の国際組織だったG7(G8)で米露が仲良くしてしまう見通しと同様、既存の国際政治の枠組みを表向き維持しながら無効にしていく、面白い戦略だ。

これは、全くの同感です。
二人がやりそうなことです。

いきなり「私たちは実は仲良しです」と
宣言すると世界がどうしようもない

カオスに陥ってしまうので、

表向き対立を演出しながら、

裏で着実に国際政治の枠組みを
組み替えていくという、

とても賢いやり方ですね。

いずれにせよ、既存メディアの情報を
信じている人にとっては、

これからの国際政治は予測不能で
混乱に満ちたものに見えるでしょう。

しかし、裏事情を少しでも
知っていれば、まあ喜劇にしか見えません。

ただし、世界が多極化に向かっていることを
敏感に察知して、それに抵抗をしている

人々がたくさんいるのも事実です。

そのうちに、こうした勢力に
ついても調べてみたいとおもいます。

また、アメリカ的な「善悪二元論」の
押しつけの時代が終わるとしても、

サミュエル・ハンチントンが
「文明の衝突」で予言したような

宗教対立が複雑に絡んでいるので、
私が能天気に書いているほど、

問題は簡単ではありません。

宗教の問題は、特に中東について
考えるとき避けてはとおれません。

これも、ともに勉強していきましょう。


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