ドナルド・トランプがイラン核合意を非難するにはわけがある

ハメネイ師

        イラン最高指導者ハメネイ師

イラン核合意といえば、

オバマ外交の大きな成果の
一つと思っていませんか?

ロシア、中国、イランの
連携での中東のアメリカ離れを促す

という意味では、たしかに
オバマ大統領の名役者ぶりが
きわだっています。

しかし、肝心の

「イランが核兵器を持つ能力を
獲得する意思を放棄する」

という点においては、
まったくのザルであり、

むしろ中東での核兵器拡散を
促進しかねない、

という見方もあるのです。

まずは、イランの核施設に
ついての情報を確認しましょう。

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記事には、

共同行動計画はイランの核保有阻止を最大の目的とし、本体と5本の付属文書の計100ページ前後で構成される見通し。イランは核開発能力の制限と大幅に強化された査察を受け入れ、欧米側が経済制裁を解除・凍結することが柱となる。

と書かれていますね。

ところが・・・

JBPRESS(Japan Business Press)
2015年7月16日の宮家邦彦氏の記事

「中東の核拡散を助長しかねない
イラン核協議最終合意」によると、

この合意はオバマ大統領の失策である
とされています。

以下に全文引用します。

 イラン核協議をめぐり長らく懸念されていたことが現実となった。7月14日、イランと国連安保理常任理事国など6カ国が最終合意に達したからだ。

早速、日本の一部メディアは「原油安定調達拡大」「エネルギー価格下落」や「日本企業進出」に期待が高まるなどと浮かれている。

一体どこからそのような楽観論が生まれるのだろう。というわけで、久し振りの「一神教世界の研究」はイラン核開発問題を取り上げる。

「合意されたこと」と「されなかったこと」

最終合意が発表された直後、米国のバラク・オバマ大統領は「核兵器へのすべての道は絶たれた(Every pathway to a nuclear weapon is cut off.)」と述べた。相変わらずのナイーブ発言だ。

これに対し、イランのハサン・ロウハニ大統領も「イランが核兵器を作ることは決してない」と述べたそうだ。

しかし、待てよ。もしかしたら、両大統領の発言は厳密には正確なのかもしれない。筆者の見立ては以下の通りだ。

誤解のないよう申し上げる。外交で最も重要なことは最終合意文書に「書いてあること」では必ずしもない。むしろ「書かれていないこと」、すなわち「合意されなかったこと」こそが本質であることも少なくないのだ。

ここからは内外メディアが報じる合意内容の概要とそれに対する筆者の独断と偏見をまとめてみた。これをお読みいただければ、筆者が悲観する理由をご理解いただけるだろう。

合意(1)イランの核開発は今後8~15年間、大幅に制限される

イランは既存の遠心分離機を今後10年間、現在の約1万9000基を約6100基に減らす。新型遠心分離機の研究・開発は一定の制限下において継続が認められる。

今後15年間、イランは濃縮度3.67%を超えるウランを製造しない。現在保有する10トンの低濃縮ウランは300キロにまで減らす。今後15年間、ウラン濃縮活動はナタンズ核施設に限定される。

中部フォルドゥの地下核施設での濃縮ウラン製造は停止され、同施設は研究関連用に転換される。アラクの重水炉は兵器級プルトニウムが生産できないよう設計を変更し、同重水炉の使用済み核燃料は国外に搬出される。

筆者の見立て(1)

ケリー米国務長官は、これまで「2~3カ月以内」に可能だったイランの核兵器レベルウラン濃縮が、最終合意により「1年以上」に伸びたと胸を張った。しかし、最終合意文書をいくら読んでも、イランは核兵器製造「能力」と「施設」までは放棄していない。

言い換えれば、最終合意でも、イランは核兵器製造「能力獲得」を断念せず、米国は真実の時(moment of truth)を8~15年先延ばしただけなのだ。

米国・イラン両大統領の言う通り、イランが「核兵器」そのものを獲得することは当面ないだろう。今イランが望んでいるのは核兵器の「製造」ではなく、いつでも、恐らくは(イスラエルのように)ごく短期間で、核兵器を製造・配備できる技術的・物理的能力を獲得・維持することだ。

その意味で両大統領の発言に嘘はない。真の問題は米国がそのようなイランの「能力獲得」をもは阻止できないと事実上認めたことだろう。

合意(2)イランはNPT(核不拡散防止条約)に残り、かつIAEA(国際原子力機関)の厳しい査察を受け入れた

確かに、IAEAの権限は拡大された。イランはIAEAの「追加議定書」を批准し、未申告核関連施設の調査や抜き打ちの査察を受け入れる。

具体的には、IAEAは未申告核物質の存在など疑惑のある施設に検証のため立ち入りを求めることができる。さらに、査察につき意見が対立する場合、関係当事国からなる仲裁委員会が助言のうえ、イランは3日以内に必要な手段を取るという。

筆者の見立て(2)

最終合意にはIAEAによる査察につきあれこれ書いてあるが、どうやら核開発疑惑のあるパルチン軍事施設など特定施設の査察にはイラン側の事前承認が必要らしい。されば、イランが軍関係施設へのIAEAの無条件査察を事実上認めない可能性もあるということだ。

この点で我々には似たような経験がある。イランがイラクや北朝鮮と同じインチキ行為を繰り返さないという保証はない。

合意(3)イランに対する経済制裁を段階的に解除する

イランに対する経済制裁はIAEAがイラン側の核開発制限を確認した段階で一括して解除される。万一、イランが合意内容に違反すれば、65日以内に制裁を元に戻す。対イラン武器禁輸は、防衛目的武器の輸出入制裁措置が緩和され、5年後に完全に解除される。

筆者の見立て(3)

これ自体曖昧な内容だが、より重大なことは、最終合意が現在中東各地でイランが行っている諸紛争への政治・軍事的介入につき何も触れていないことだ。当然だろう、今回の合意はイランの「核開発」を「阻止」すべく結ばれたものだからだ。

逆に言えば、このまま経済制裁が解除されれば、イランの財政は大幅に改善し、米国が「国際テロ支援」と呼ぶイランの対外干渉は止むどころか、むしろ一層拡大するということ。

イスラエルやサウジアラビアなど湾岸・アラブ諸国が最も懸念するのがこの点である。

的外れの各社社説

以上を踏まえ、7月15~16日の主要日刊紙各社の社説をもう一度お読みいただきたい。紙面の都合もあり筆者の責任で要約させてもらった。詳細は全文を参照願いたい。

【朝日】イラン核合意―流れを確かなものに

○(イランの)核武装の悪夢は遠のいた。国際的な結束が欠かせない。
○隔たりを克服して合意にこぎ着けたのは、双方の理性の勝利と言えるだろう。
○エネルギー市場でのイランへの期待はかねて大きい。
○安倍首相はこの湾岸での機雷掃海を挙げるが、もはやそんな想定は難しい。
○発想の転換は、日本にも求められる。

【毎日】イラン核合意 中東安定への転機に

○難産の末に生まれた歴史的合意を大事にしたい。イランの誠実かつ厳密な履行が不可欠である。
○キューバとの関係正常化に続く外交得点。イランと米国の歩み寄りは確かに画期的である。
○核協議を足場に米・イランが協力関係を築ければ中東安定にはプラスになろう。
○イランと欧米が関係正常化へ向かうなら、日本は経済も含めてイランとの緊密化に努めたい。
○中東情勢を好ましい方向へ導く日本の役割を考えることも大切だ。

【日経】イラン核合意を中東地域の安定にいかせ

○イランに核兵器を持たせないようにする歴史的な合意である。
○合意を確実に履行し、中東地域の安定実現にいかすことを望みたい。
○粘り強く交渉を続けた双方の努力を評価したい。
○核合意を中東が混迷から脱する足がかりにしていきたい。
○イランの国際社会復帰を後押しすることは日本のエネルギーの安定調達にも寄与する。

【産経】イラン核合意 着実な履行で不信克服を

○イランの核武装阻止に道筋を付け、同時に国際社会への復帰を促す歴史的合意。
○軍事施設を例外としなかったのは評価できる。
○イランの歩み寄りは経済制裁の効果である。
○もろさを抱えた合意であることを認識すべきだ。
○イランが国際社会に復帰し、責任ある地域大国として中東の安定に役割を果たすことを期待したい。

以上の通り、7月15日の各社社説は似たり寄ったりだ。各社とも申し合わせたかのように、「歴史的合意を評価」し、「イランの合意履行が必要」としつつ、「中東地域安定」と「エネルギー安定調達」への期待をにじませている。

「コップは半分満たされている」と見るこれらの社説がいかに当たり障りのない、付け焼刃の論説に過ぎないかは繰り返すまでもないだろう。これに対し、7月16日の以下の社説は実に的を射ており、他社との違いは歴然だ。

【読売】イラン核合意 中東安定への転換点になるか

○イランは本当に合意を守るのか。楽観はできない。
○合意文書では、イランの核開発の能力や核施設は温存される。
○合意期限が切れる15年後以降は、何の制約も設けていない。
○イランへの経済制裁が解除されれば、原油の増産と輸出増が期待できる。
○日本も調達先の多角化を図るため、情報収集を強化したい。

合意は中東湾岸核拡散の始まり

読売の社説は「コップは半分空だ」と指摘している。その通りだ。今回の最終合意の本質は、

(1)イランが核兵器開発能力獲得の意図を放棄せず
(2)イランが合意を完全に履行するかにつき懸念が残るにもかかわらず
(3)米国はそのようなイランを受け入れた

すなわち、武力などによってイランのイスラム共和制の体制変更は行わないと事実上認めた、ということに尽きる。これは米国の歴史的誤算かもしれない。

残念ながら、始まったのはイランの「非核化」ではなく、中東湾岸地域での「核兵器拡散」だ。これのどこが「米国とイランが歩み寄った結果」なのか。

一部分析は、米国が中東安定化のためにイランを必要としており、米国とイランはIS(イスラム国)との戦いで「共闘」する可能性があるとまで書いている。これらが中東における戦略的問題と戦術的問題を混同した俗論であることは言うまでもないだろう。

今回イランは最も守りたかったこと(核兵器開発技術獲得)を皮「一枚」どころか「何枚」も残して守る一方、最も取りたかったもの(政治体制維持と経済制裁解除)をほぼ手に入れた。

今回はイランの粘り勝ちであり、オバマ政権は米国が「実力以下の外交」しかできないことを再び天下に晒したのだ。これ以外の解決方法はなかったとの反論は理解するが、それを言っても現実は何一つ変らない。

頼みはイラン一般国民だが、今のところ彼らは沈黙を守ったままだ。テヘランとコムにいるイラン保守強硬派の高笑いが聞こえてくる。

わたしはこの記事を書くにあたって、
数多くの解説記事に目を通しましたが、

この記事がもっとも適切に
イラン核合意の内容を

言い表しているように思えます。

イスラエルは入植問題においては
明確に国際法に違反し、

国際的非難を受ける立場ですが、

この「核拡散」の問題については、

もちろんイスラエル自身も
核保有国であるということは

もはや公然の秘密であるわけですが、

イランにたいする
オバマ大統領の姿勢に

不満なのは当然だといえます。

ドナルド・トランプ氏は、
イラン核合意については

ほぼ同様の認識を持っています。

“POLITIFACT”という、
政治家の発言の正確性を
ジャッジするというサイトの

2016年3月24日の記事によると、

2016年3月21日の
ワシントンにおける

アメリカイスラエル公共委員会会議に
おけるスピーチで、

ドナルド・トランプ氏は
こう述べています。

「わたしは、この問題について
詳細にわたり研究しました。

イラン核合意は、イランにたいして
軍事的な核能力を

解体することさえも
求めていません。

ただ何年かにわたって、

軍事的な核開発プログラムを
制限しています。

そうした制限の期限が切れたら、

イランは十分な規模の
軍事的な核能力が

稼働可能な状態になるでしょう。

そして、イランの振る舞いが
どんなにひどくても、

その歩みを遅らせることは
できないのです。

とても、とても恐ろしい事態です。

関係者すべてにとって。

そして特にイスラエルにとって。」

このサイトの記事は、
ドナルド・トランプ氏を

断罪するために
書かれたものなので(笑)、

ジョージタウン大学の
マシュー・ケーニヒ氏、

コロンビア大学国際関係校の
リチャード・ネフュー氏、

国務省スポークスマンの
セム・ウェルベルグ氏など

権威をずらりとならべて、
重箱の隅をつつくような

議論を展開して、
最後に

“We rate the claim as False.”
(ドナルド・トランプ氏の
主張は虚偽である)

としています。

わたしもさすがに
読む気がしないので(苦笑)、

目を通していませんが、

合意文書をきちんと読んだら、

このそうそうたる権威が
言っていることの方が

正しいのかもしれません。

一応、イラン核合意文書の
フルテキストへのリンクを

貼っておきます。

↓ ↓ ↓ ↓ ↓
イラン核合意文書へのリンクはこちら

また、イラン核合意については、
最近になって

きな臭い話題も出てきました。

イラン核合意後に、
アメリカがイランに対して

17億ドル(約1989億円)の清算金を
支払っていたというものです。

↓ ↓ ↓ ↓ ↓
参考記事はこちらをクリック

イスラエル
イラン核合意
プーチン・トランプの核軍拡宣言

これらがつながっている
気がして、

基礎的な調査をしたわけですが、

昨日の田中宇氏のメルマガで、
ちょうど核軍拡宣言についての

納得できる解説があったので、

それもまじえて明日は
「核兵器」について取り上げます。


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