ドナルド・トランプの「アメリカ第一主義」と国益・中国外交

日本時間2016年11月9日17:00前に、

トランプ氏は副大統領候補のペンス氏や
家族とともに

地元ニューヨークで支持者のまえに姿を現し、

さきほど、クリントン 氏から電話を受け、われわれの勝利を祝福するものだった

と述べ、勝利宣言しました。

この選挙では、2016年12月12日現在の情報で
クリントン氏がトランプ氏に対して

得票数では260万票以上上回ったものの、
勝敗を分ける各州の選挙人獲得では

トランプ氏が勝利に必要な270人を上回る
306人を確保しています。

対するクリントン氏は232人。

クリントン氏は、歴代大統領候補のうちで
2008年のオバマ氏に次ぐ歴史的な得票を
得ながら、

大統領選の民主主義のルールの前に
敗れたことになります。

アゴラの2016年11月25日の記事では、

各州ごとに最終得票数を比較してみた場合、両者の得票差はカリフォルニア州の得票差によって生まれたものであることが分かります。

 

全米得票差は200万票差でヒラリー勝利、カリフォルニア州の得票差は400万票差でヒラリー勝利(同州のヒラリー総得票数802万票)です。つまり、ヒラリーの全米得票数での勝利の要因はカリフォルニア州による得票差で説明可能です。

詳しくは説明しませんが、

民主党陣営の選挙は「死ぬほど下手くそだった」ということ

 

と簡潔にしるされています。
わたしもそうだと思います。

緑の党の大統領候補者であった
ジル・スタイン氏が

ミシガン、ウィスコンシン、ペンシルベニア
各州で再集計を求めているものの、

それがどうなってもドナルド・トランプ氏が
2017年1月20日にアメリカ合衆国
第45代大統領に就任するのは確実です。

彼は選挙運動中、
「アメリカ・ファースト」を連呼していました。

アメリカ第一主義とも言われますが、
その内容はどのようなものなのでしょうか?

日本のメディアは、意図的に?
曲解して報道しているようです。

まず世界情勢的には、「孤立主義」への回帰です。

日本が真珠湾奇襲攻撃を仕掛け、
アメリカが第二次世界大戦に引っ張り出されるまで、

アメリカ国内の世論は
アメリカの国益にかかわる南北アメリカと
フィリピンなどの植民地以外は

かかわらないことを良しとしてきました。

第二次世界大戦が終わっても、
戦中のいわゆる「ヤルタ会談」で
話し合われたように、

戦勝国である各国による
多極的な世界秩序を

当時のアメリカは
望んでいました。

それが、あまりにも有名な
ウィンストン・チャーチルの
1946年3月の「鉄のカーテン」演説で

イギリスがソ連を明確に敵視し、
当時のアメリカのトルーマン大統領が

それに同調することによって
「冷戦」の時代が始まりました。

わたしは大学時代、現代史を専攻し、
教授は冷戦時代の「封じ込め政策」
の専門家でした。

また、わたし自身は英国の戦後外交に
興味を持ち、特にチャーチルは
キーマンとして深く研究しました。

冷戦は、覇権を失ったイギリスの
起死回生の覇権奪回策だったと
わたしは思っています。

第二次世界大戦が終わった時、
イギリス自身にはもう
大英帝国時代の力は残っていませんでした。

世界一の力を持つに至ったアメリカを
抱き込み、ソ連と対立させ、
隠然と背後から操る、

「分断して征服せよ」

イギリスの十八番としてきた
外交の原則が
ここでも活きました。

「イギリスとアメリカの特別な関係」
をうまく利用したのです。

アメリカはいつしか、
「世界の警察官」として

世界のあらゆる紛争に
首を突っ込むようになりました。

ソ連とも盛んに軍拡競争を
繰り広げました。

おかげで、軍需産業は
大変に儲かりました。

軍需産業は大きな力を
持つに至り、

「軍産複合体」と呼ばれる
政・官・財のトライアングルを
形成しました。

50年代以降のアメリカの
大統領は、基本的に
彼らの操り人形です。

ケネディは彼らの手厚い
支援によって大統領になれたのに、

裏切ったので暗殺されました。

彼らは、世界中で反アメリカ的な
政権の転覆のために

反政府勢力を支援し、
テロリストを育てては、

紛争の火種をまきちらしました。

例えばイラク戦争では、もともと
アメリカが支援していたサダム・フセイン
が大量破壊兵器を持っている証拠があると

CIAがパウエル国防長官に
ウソの情報を入れ、

その情報を信じて真っ先に動いた
イギリスの元ブレア首相などは

今や戦争犯罪人扱いです。

ドナルド・トランプ氏は選挙戦を通じて、
この軍産複合体を痛烈に
批判し続けました。

軍産複合体が力を得てからの
アメリカ史においては、全く初めての
常識破りな出来事です。

アメリカの選挙は、とにかくカネが
かかります。

軍産複合体の息のかかった誰かから
資金援助してもらわないと、
当選なんて絶対無理です。

しかし、トランプ氏は大富豪なので、
ほぼ自前で選挙資金を
準備することができました。

これが軍産複合体を正面から
批判できた最大の理由でしょう。

軍産複合体には、もちろん
主要メディアは全てふくまれています。

メディアは総力戦でトランプ氏の
ネガティブキャンペーンを行い、

トランプ氏を支持すると表明した
新聞は主要メディアの中では結局
1社もありませんでした。

ですから、既存メディアを情報源に
する人々は、投票日当日まで
クリントン氏が大勝すると

思い込んでいたのです。

結果はトランプ氏の勝利。

その後、彼は軍産複合体に対する姿勢を
全く変えていません。

あらゆる側面で、無効化する策を
繰り出しています。

「アメリカ第一主義」

日本ではいまだに誤解が多いようです。

世界情勢の中では、これはヤルタ体制や
戦前の孤立主義にみられる

「多極主義的な世界」を目指す動きです。

その証拠に、トランプ氏の外交政策の
一番の相談相手は、選挙戦中から
ヘンリー・キッシンジャー氏です。

キッシンジャー氏は現在93歳ですが
お元気で、「ニクソン訪中」を

実現した国務長官として大変有名です。

彼はかねてから親中的な外交政策を
唱え、アメリカ単独覇権主義ではなく、

多極的な世界を追求してきた人物です。

12月2日、トランプ氏は台湾の蔡総統と
電話会談し、世界に衝撃を与えました。

しかし、そのまさに直前に
キッシンジャー氏が中国の習近平首相
と会談していたことは

あまり知られていません。

また、駐中国大使にテリー・ブランスタッド
アイオワ州知事を指名したことも

日本ではあまり報道されていません。

ブランスタッド氏は留学生だった習近平氏を
知事として歓待したこともあるなどきっての
親中派であり、

関税などの経済問題では
中国に厳しい態度を取ることがあっても、

アジアの覇権は中国に任せ、
多極的な世界を加速するという
外交の基本方針があるのは

間違いないと言えるでしょう。

それがアメリカの国益にかなうと
判断しているのです。

「アメリカ第一主義」とは
まちがっても

他国をおしのけてまで
アメリカをNO1にしようという
今までのモードで考えてはいけません。

経済においても同様です。
トランプ氏は大統領就任の日にやることの
筆頭としてTPPから外れると通告する

こう宣言しています。

これも国益の観点から、当然です。

そもそもTPPは、通常の自由貿易協定とは
大きく性格が異なります。

通常は参加する各国家間で分野ごとに得失
があるわけですが、

TPPの場合は参加する国すべてが
「失」ばかりです。

なぜなら、TPPは多国籍企業にとって
国家が定める様々な規制が邪魔なので、

企業の利益を最大化できるように
国家より多国籍企業を上に置くという
協定というのが本質だからです。

そのため、TPPの具体的な条文というのは、
国家機密扱いとされ、

当のアメリカ議会の議員も大多数が
内容を全く知らないまま審議をするという

お笑いのような状況でした。

もちろん日本でも同じです。

国家にとっては、主権を奪われるのと
同じことですから、

アメリカ第一主義を掲げるトランプ氏は
何をおいてもTPPをつぶさなければ
ならないのです。

まだメディアではトランプ氏の方向性が
見えないとか言っているようですが、

少し冷静に考えれば、これから
起こることはほとんど決まっています。

ドナルド・トランプ評論家、研究家として、
日々有益な情報を届けていきたいと
思います。


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